木桶は絶滅危惧種 !?
~松本醤油商店・山名酒造・森田醤油店~
今週は畑だより『番外編』として、農産品ではなく加工品の「産地だより」をお届けします。
「醤油がどんな入れ物でつくられているのか」なんて考えたことはありますか?
らでぃっしゅぼーやで販売している「醤油」は木桶仕込みが主流ですが、日本の醤油生産量のわずか1%程度だそうです(※1)。
現在流通している醤油のほとんどは、ステンレスやプラスチックのタンクに仕込み、速醸(温度を人工的にコントロールし酵母の活動を早める製法)で製造されます。この方がコントロールしやすく、安定的な大量生産が可能だからです。
この技術が生まれなければ、日本の伝統食である醤油がここまで世の中に広まらなかったともいわれます。
木桶をつかった天然醸造
江戸時代に発展した「木桶仕込み」。日本酒、醤油、味噌などさまざまな食品が木桶で発酵・醸造されてきました。
木桶では人工的な加温ができないため、微生物の働きを待ちながら時間をかけて醸します。醤油の天然醸造の場合は少なくとも1年、長ければ3年もの時間をかけてつくられます。
木桶をつくる職人がいない
木桶は100年以上もつとされ、実際に今使用されている木桶のほとんどが、はるか昔につくられたものを蔵人が受け継ぎ守ってきたものです。
それだけ頑丈な木桶づくりには高度な技術が必要ですが、木以外の容器が発展したことで新たな木桶の製造がほとんどされなくなり、製造所も減っていきました。
また、木桶の原料である樹齢100年を超える杉や、箍(たが)に使う竹も手に入りにくくなっています。
職人技術を絶やしてはいけない~森田醤油店の取り組み
「柚子ぽん酢 」や「国産丸大豆生しょうゆ 」をつくる島根県の森田醤油店は、古い木桶の再生に取り組むなど、100年先も職人の技術が伝承されるように考えています。
木桶は杉と竹、竹釘でできています。では単に、山に生えている杉や竹を使えばよいかというと、そうではありません。杉は樹齢100年を超え、ていねいに管理されたものを、竹は20年ほどかけてまっすぐに伸びた真竹を、必要とします。森を手入れする職人も、木桶を作れる職人も、ほとんどいなくなってしまっています。
伝統は、明日へつなぐこと~山名酒造の取り組み
100年以上使い込まれた木桶は、最後には分解され土へと戻ります。役割を終えても環境に負荷を与えません。また江戸時代には、木桶はまず酒蔵が新桶をつくり、お酒が漏れるようになったら醤油蔵へと、木桶自体の循環も行われていました。
おいしい定期便「奥丹波からの季節の日本酒」の生産者である山名酒造は、木桶をつかった日本酒づくりを数年前から復活させており、その木桶の再利用の循環にも今後取り組んでいければおもしろい、と話してくれました。
山名さんは木桶についてこう語ります。
『蔵の菌と共生するために木桶や木の道具がある。木桶仕込みを始める前は、伝統とは何かを考えていた。
伝統は昨日やっていたことを繰り返すことではなく、明日につなぐこと。そうであるためには、若い人がやりたいと思ってくれるものでなくてはならない。木桶って、かっこいい。
そして、自分がこの世からいなくなっても、バトンのように次世代につないでくれると思った。』
木桶が守る、おいしい生態系
タイトルで木桶を「絶滅危惧種」と表現したのは、木桶を生きた存在と捉えているからです。ビオトープとは、生物が共存する生息空間のこと。木桶には、醤油のおいしさにつながる成分をつくるたくさんの微生物が棲みつき、相互作用しながら共生しています。
木桶仕込みがなくなることは、このビオトープ(生物のにぎわい)がなくなることを意味します。木桶仕込みを選ぶことは、ひとつの生態系を守る行動でもあります。
その土地の風土の中で育った微生物が棲みつき「おいしい生態系」をつくっている木桶。そしてその微生物と対話し、職人が時をかけて醸す味わいは、それぞれの蔵ごとに唯一無二です。
自然の働きに委ねて醸される木桶仕込み。その恵みをいただくことは、きっと私たちのエネルギーになります。木桶仕込みの醤油を通して、自然とのつながりを身近に感じていただけたら幸いです。
7月1週のWeb・カタログでははつかり醤油を特集しています。あわせてご覧ください
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