豪雪の爪痕。りんご生産者の再起
津軽産直ファーム・まさひろ林檎園・新農業研究会(青森県)
ーこうやって来て話を聞いてもらえるだけでもありがたいし、食べる人に伝えてもらうことで、がんばろうって思えるー
(新農業研究会 山形さん)
※今回非常に長文のコラムとなっておりますが、青森の甚大な雪被害のリアルをお伝えしたく、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです
「剪定が終わらない」
深い雪に覆われていた青森に、足早に春が訪れました。津軽平野では雪をいただく岩木山が際立ち、雪どけ水が田畑を潤し、りんご畑では花芽が膨らみ始めています。その変化に生産者は焦りの色を隠せません。
りんご畑の後ろにそびえるのは、津軽富士と称される岩木山。日本百名山のひとつ
記録的な豪雪の影響で、本来終えているはずの剪定作業が遅れ、「まだ半分ほどしか進んでいない」という声も…。
長い間畑が雪に覆われていたため、あらゆる作業が遅れていますが、花芽は待ってくれません。
膨らみ始めるりんごの花芽
豪雪による深刻な被害
この冬の被害は前年を上回り、津軽産直ファームでは、幹からぱっかりと折れた木が多くみられました。特に枝を横に広げる樹形では雪が積もりやすく、支柱ごと折れたり、雪の重みで支柱が土の中に深く埋まってしまう例も。2mの積雪の重みの凄まじさを感じます。
幹から裂けてしまったりんごの木(津軽産直ファーム)
折れたり土中に深く埋まってしまった支柱があちこちに…(津軽産直ファーム)
幹から裂けた木は伐採せざるを得ません。枝だけ折れた木は、枝を切り落として木を残すこともできますが、剪定作業も進めなければいけないなか、被害木の対処は後回しにするしかなく、やむを得ず手放すこともあります。
折れた木を伐採し植え替えたとしても、収穫まで約10年を要します。2年続けて広範囲に被害を受けたため、苗の注文が殺到。手に入るのはなんと2年後といいます。収量が減ってしまう空白の期間が続きます。
「待つ」ことをやめた挑戦者たち
青森県では過去5年間で13%にあたる1400軒以上の果樹農家が減っています。そんななか、津軽産直ファームの工藤さんは
「何もしなければ青森のりんごの生産量は近い将来半分になる。効率的に生産できるよう、樹形を変えていくしかない」
と新しい栽培方法への転換を訴え、「キツイ・汚い・危険」の農業の3Kを
「感動・稼げる・かっこいい」新3Kへ変えていくと熱く語ります。
津軽産直ファームの工藤さん
また、苗不足の課題を独自の方法で解決しようとしているのは、まさひろ林檎園の工藤さん。昨年の大雪による被害を受け、一般的には苗木屋さんから購入する果樹の苗を、なんと自ら作り始めました。
まさひろ林檎園の工藤さん
りんごの苗は、病気に強い「台木」と、おいしい実をつける品種の「穂木」を接ぎ木して育てるため、完成までに数年を要します。
そこで工藤さんは、木の脇から生える「ひこばえ」を活用し、自ら接ぎ木で苗木を育てる道を選びました。手間も技術も必要な取り組みですが、「待っていられない」と決断し、この春には植え付けが可能な状態にまでこぎつけています。
工藤さんの挑戦!苗木づくり
山のりんご畑をめぐる葛藤
特に大雪の被害が甚大だったのは、八甲田山の麓で山の畑を守る新農業研究会の山形さんです。
新農業研究会の山形さん
元々雪の多い土地で、これまで雪に耐える高木が代々受け継がれてきましたが、作業効率の課題から山形さんは木の低樹高化を進めてきました。しかし、ここ数年の2.5~3mの大雪で被害は甚大。幹ごと倒れる木も相次ぎ、畑には空白が目立つようになりました。
雪が溶けたが、剪定も片付けもできず手つかずの畑
山の畑は日当たりが悪く冬の訪れが早いうえに、近年は熊の被害も多いため、りんごを作る上では不利な土地。合理的には山を離れ平地へ移ることも考えられますが、先祖代々受け継いできたこの山の畑を守っていきたいという思いは強く、葛藤は深まるばかりです。
熊の爪痕がついた木も多く、危険と隣り合わせの栽培であることがわかります
近所で5軒あった農家は離農し今は2軒に。山形さんには4人のお子さんがいます。子どもたちに引き継げるように、傾斜のきつい場所の木は切り、平らなところに木を集めて、年月をかけて計画的に整備をしてきたものの、近年は想定を上回り、台無しにするほどの雪が降ります。この厳しい条件で「息子に同じように手間をかけて作れ、とも言えない」と語ります。
「やめたくなることもあるが、なんとか続けたい」と話す山形さん
それでも、「山で作ったりんごはうまいんだよ」といいます。山のりんごは夏の高温障害を受けにくく、寒暖差で甘みが増すのが特長です。その品質はりんごの選別担当、松橋さんも「山形さんの山のりんごはうまいんですよ」と太鼓判を押します。
「こうやって来て話を聞いてもらえるだけでもありがたいし、食べる人に伝えてもらうことで、がんばろうって思える。」
と前を向き、どの木を未来に残し、どのようなりんごづくりを続けていくのか、模索を続けています。
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