らでぃっしゅぼーや

今週の畑だより

らでぃっしゅぼーや農産担当による
畑の"今"を届ける産地密着コラム

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~生産者からのメッセージ~
2023年のりんご栽培を
振り返って
新農業研究会(青森県)今井さん

振り返ると昨年2023年1月下旬、山間部のりんご園では雪と寒さのピークを迎えましたが、その後は平年より高い気温で推移。3月には雪解けも早まり、4月のりんごは発芽から開花まで順調に進みました。

しかし開花前後の低温と降霜で、主力の「ふじ」を主体に、サビ果(実の凍傷のような傷が、果実になってもサビのような模様で残ること)が発生しました。

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りんごの花芽。開花前に低温や霜にあたると、サビ果が発生しやすくなります

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皮がサビたようにみえる「サビ果」

その後は適度な雨と気温で、平年より早く実が膨らみ、今年のりんごは豊作傾向と報道されていました。

ところが7月から8月にかけて起こった干ばつと高温により、成長が鈍化。8月の猛暑日が続いた時期には、日焼けや落果が発生しました。9月に入っても真夏日を記録する天候で、色づきが遅れ気味になりました。追い打ちをかけるように、炭疽病、輪紋病、褐斑病等が多く発生し、腐敗や落果が続きました。

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落果したりんご

さらに近年経験したこともないような、鳥による食害も多く、りんご農家を悩ませました。

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鳥による食害

豊作傾向という予測が一転して不作に。特に早生の「つがる」では、日に当てるために葉を摘んだ部分が高温で日焼けして売り物にならず、全滅した農家もいました。急遽、当会では葉を摘まない栽培に切り替えました。

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有袋(袋に包んで育てる)「ジョナゴールド」は、袋内が高温で70℃位に上がったということで、収獲は50%減だったといいます。主力の「ふじ」もサビ果が多かったりと規格にあう正品が少なく価格が上昇。規格外の加工向けが多くなりました。

りんご以外でも、当会の人参の生産者は、高温により全滅だったそうです。じゃがいもも収穫が半減。米生産者も収穫量減と等級の低下で厳しい状況です。

今後、農業を継続できるか厳しい状況と感じます。苦労した結果が報われないのは、若い人たちにとって魅力ある産業として経営継続への意欲が湧かないのが正直なところです。当会は発足から40年以上になります。発足当初のメンバーは亡くなったり、一線を引いて子供世代が主体で頑張っています。

私は今年75歳。後継予定者の長男は、休みの土、日には雪のある剪定作業など手伝いに来てくれています。後継者にやる気を起こせるようにと、園地の改造や品種の更新などを行ってきました。ここ数年は自動草刈り機を導入したり、高密植栽培の導入、トイレの設置と省力化や作業の軽減を図る条件整備も行ってきました。その借金も今年で完済予定です。

さらに、今年一部改植事業でわい化(効率的に収穫量をあげる栽培方法)に転換する予定です。近年のりんご農家の深刻な人手不足と温暖化により、赤系統の品種では着色がしにくく、手入れ作業を軽減するためにも黄色系の品種に。もう一つは高密植園地に防風網を設置する予定でいます。有機肥料を撒く機械も導入する予定。

幸い、どの事業も補助事業の対象になったので助かっています。当然ながら事前に長男に相談しながらではありますが。今後いつまで現役でいられるかわからないですが、後継者にいい形で引き継いでいけるためにと、がんばっています。

一般の栽培においては、化学肥料や農薬の使用で、大きくて外見のきれいなりんごが高値で流通しています。また、大玉生産で肥料の多投や外見をよくする着色優先の栽培で、早くから、あるいは強度の葉摘みで、赤く見栄えはよいけれど、味が伴っていないりんごも多いと感じます。

当研究会では、長年味のよいりんご栽培を研究し実践してきました。土壌分析と施肥設計による適切な肥培管理。うまみ成分の出せる肥料の選択や植物生理を勉強し、適期・適量の施肥、無袋により、幼果から太陽をいっぱい浴びせ、完熟状態での収穫等によりコクのあるおいしいりんごを生産してきました。主力品種「ふじ」の葉とらず栽培の拡大推進は、りんご農家にとって究極の省力化に貢献すると思います。

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らでぃっしゅぼーやでも販売している「葉とらずふじ」。葉の部分は色づかずまだらになりますが、甘くおいしいりんごです。

◎葉っぱの力
葉が陽を浴びて養分(でんぷん)を作り、りんごに蓄えられて糖になります。葉はおいしさを作る工場のようなもの。葉を多く摘まないで、葉の持つ力を最大限生かし、完熟状態で収穫し、ふじ本来の特性を充分発揮してコクや風味のあるりんごに仕上げます。

栽培のポイントは、収穫を遅らせて完熟状態にすることです。ほかにもチェックポイントを掲げて、みんなで研究実践してきました。

◎栽培に関しての特別の工夫
・葉をたくさんつけて自然の状態で熟させます。収穫時期になっても一気に収穫せず、熟れておいしく実ったりんごから収穫します。

・有機肥料主体でミネラル分(カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン等…)を補給した土づくりを行います。草生栽培で除草剤を使用しないのでミミズ等が多い、ふかふかの土です。根から栄養分を吸収し、葉が太陽の光を浴びて甘み(カリウム、有機酸・クエン酸、ビタミンC)のある栄養、自然の恵みを受けたおいしいりんごになります。

今年も原点に立ち返り、みなさまに安全でおいしいりんごを提供するために頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

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