らでぃっしゅぼーや

今週の畑だより

農産担当者による産地密着コラム

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「鉛筆みたいな人参しか…」酷暑で人参が不作

 暑い!そして雨が降りません。「台風でもいいから来てほしい」と真剣に願う生産者もいる一方、台風や大雨に悩まされる地域もあり、野菜も生産者も「水」に振り回される夏です。

 「日照りに不作なし」といわれるように、長雨や曇天よりも雨が少ない方が農作物の育ちがよいことが多いとされます。一方で、植物の体の中は80~90%が水分で、肥料を吸うにも光合成をするにも水が必要。7月は、夏から秋に収穫を迎える北海道のじゃがいもや玉ねぎ、長野や東北のりんごや梨にとって大事な肥大の時期です。この時期に雨が少ないと小玉になります。例えば、1個平均100gのじゃがいもが90gにしかならないということは、すなわち生産者の収入が1割減ってしまうことを意味します。それだけ「夏の雨」は、降り過ぎては困るけど、ある程度は降ってほしい、というのが生産者の願いです。

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2021年夏、干ばつ被害に遭った北海道のじゃがいも畑

 人参も苦戦しています。暑さに弱い人参は、夏は北海道や東北など冷涼産地で作られますが、北海道や青森でも30℃を超えるのが当たり前になってきました。青森で人参を作る松林さんからは「掘っても掘っても鉛筆みたいな小さい人参ばかり」と嘆きの電話が。7月後半から雨が極めて少ない干ばつ状態のうえに、猛暑日の連続。暑さ嫌いの人参にはたまったもんじゃありません。人参があまりに小さく弱いものは、収穫機械で葉をつかんで引っ張り上げる際に頭の部分が折れてしまうため、規格外としての扱いもできません。ひと雨しっかり降れば、ぐぐっとひと伸びするはずなのですが…。

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北海道の小路さんの人参畑は、今のところ順調

 また、夏人参には有機的な栽培ならではのハンデがあります。それは、「草とり」。夏の主産地の北海道では、広大な畑で大規模に野菜を作ることができる地の利を生かすべく、一般的には除草剤を使うのが当たり前です。選択性除草剤といって、人参にかかっても人参は枯れず、イネ科などの対象雑草のみを枯らす薬がよく使われます。一方でらでぃっしゅぼーやでは除草剤の使用を禁止しているので、地道に草とりをするしかありません。炎天下での草とりは体力的に厳しいのもさることながら、広大な畑の草を全部人の手でとるのはさすがに無理なので、必然的に栽培面積は限られてきます。

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北海道いずみ農園の人参畑。人力できれいに草とりされています

 ちなみに人参の草とりに有機的な対処法がないわけではなく、「太陽熱養生処理」といい、種まき前の数週間、畑を太陽の熱で高温にして雑草の種を焼くやり方もありますが、北海道では地温が足りず、残念ながらこの方法は使えません。昨年、岩手県の生産者に除草剤なしでの栽培にチャレンジしてもらいましたが、やはり草に負けて断念しました。

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草に負けて断念した人参畑

 そんなわけで、みなさまの夏の予定に水を差すかもしれませんが、食卓を潤すためには、雨が必要です。台風のような激しい風雨ではなく、畑を潤す恵みの雨がどうか降り注いでくれますように。

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