2024年は大不作。今年の柑橘は?
~柑橘農家を悩ます高温と鹿被害~
収穫は折り返し、貯蔵の季節へ
年末が近づき、柑橘農家にとってみかんの収穫作業は折り返し地点を過ぎました。9月から始まった収穫は現在終盤に入り、年内にはほぼ完了します。
収穫後は倉庫での貯蔵を経て、順次出荷されます。青島みかんなどの晩生(おくて)品種は2月末まで出荷が続きますが、収穫直後の強い酸味は寝かせることで抜けていき、コクのある濃厚な甘みへと変わります。
中晩柑はひと手間かけて
1月以降はみかん以外の「中晩柑(ちゅうばんかん)」が中心に。中晩柑の多くは年内に収穫し「予措(よそ)」と呼ばれる乾燥工程で貯蔵性を高め、酸を抜いてから出荷されます。早めに収穫することで、寒害や鳥害を避けられる利点もあります。
今年のできばえと中晩柑への期待
昨年は柑橘全般で記録的な大不作でしたが、今年は秋の肥大期に雨が降り、通常のワンサイズ大玉になり収量も多めに。
今年のみかんは例年よりワンサイズ大きめ
そして収量も多めでした!生産者のひとり、長有研の馬場さん(長崎県)
ただし大玉は味がややぼやけやすく、おいしさは「もうひとつ」だったという声も聞かれます。一方で「みかんが不調な年は中晩柑が好調」ともいわれ、生育・肥大する時期がズレるために、これから出荷が始まる中晩柑は期待が寄せられています。
高温障害で崩れる収量のリズム
産地では生産現場の悩みが一層深まっています。一つは高温障害。
暑すぎる夏により、花が咲いても実がならない、実がなってもすぐ落ちてしまうなど不安定な状況が続いています。
従来の「表年、裏年」という収量のリズムも崩れ、生産者からは「近年は表も裏もない。裏年の翌年がまた裏年だったり、よくわからなくなってきた」と、戸惑いの声が上がっています。
樹の中で何が起きているのか、またその影響が中長期的にどう現れるのかについては、まだ十分に研究されておらず、文献を調べてもはっきりしたことは分かっていません。
近年は食味重視で控えてきた肥料を見直し、基本に立ち返って「土づくり」を重視。樹の体力を維持すべくしっかり堆肥を入れている生産者が増えています。
高温対策として堆肥をしっかり入れた畑
鹿による深刻な被害と進まない品種更新
もう一つの悩みが鳥獣害。熊本南部では近年鹿が急増。田浦地域にある鶴田有機農園の近辺では鹿自体は昔からいましたが、最近では高さ1.2mのフェンスをも飛び越え、みかんの木を好み、届く高さの葉や幹の皮を食べ尽くします。
皮を食べられた木はひどいと枯れていきます。
鹿用フェンス。もともとは横向きに張っていましたが、鹿に飛び越えられてしまうため、現在は縦向きに設置
柑橘は、毎年5%程度木を更新するのが常道で、古い木を切って新しい品種の苗木を植えていきますが、苗木が食べられ、過去数年、品種更新が進まない状況が続いています。
肥薩自然農業グループのみなさん。若手の新田さん(一番右)は「苗木を植えても100%食べられてしまう」と話します
「品種更新が一挙に滞り、産地が老いていく」と鶴田有機農園の鶴田さん
過去数年、植え替えが全くできていない状況。フェンス設置は高額で、補助申請には近隣3軒の同意が必要なため、高齢化などで申請できないケースも。
斜面中央にサークル状に木がなくなっている所は、鹿の食害により枯れたエリア
同じ熊本県内でも、中北部の産地や、四国・和歌山はまださほど鹿被害が深刻ではなさそうですが、東北の熊被害の急増の例を見ても、今後さらに広がる可能性があり、引き続き注視が必要です。
ほかにも今が旬!の
柑橘生産者をご紹介
和歌山県・紀の芽の会、岩本さん親子
和歌山県・紀の芽の会、はっさくの生産者田中さん
和歌山県・紀の芽の会、根来さん
熊本県・みすみモグラ会の中山さん。生産者が病気で倒れ草の管理ができなくなりツタだらけになってしまいました。多くの産地が高齢化や人手不足の問題も抱えています
熊本県・肥薩自然農業グループ、吉田さん
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