小粒の牡蠣も、適材適所でムダなくおいしく

ふぞろいが生まれる現場

水産物 牡蠣

小粒の牡蠣も、適材適所でムダなくおいしく

生はもちろん、焼きもの、鍋、炊き込みごはん、フライなど、さまざまに食べられている牡蠣。年々、魚介類が獲れなくなっているなか、牡蠣は生産量がずっと安定している「魚介類の優等生」です。今回は、牡蠣の生産量日本一(農林水産省:漁業・養殖業生産統計年より)を誇る広島県の、養殖と加工の現場を訪れました。日常、何気なく口にしている牡蠣ですが、現場では規格外の牡蠣を捨てずに生かす工夫が重ねられていました。

文:横尾久美子(エアリーライム) 写真:甲田和久

同じ湾内でも、成長にばらつきがでる牡蠣

 広島県南西部に位置する呉市。ここは牡蠣の養殖がさかんな地域で、海に面した音戸地区には20軒ほどの牡蠣漁師が軒を連ねます。いたるところで目にするのが、高く積み上げられたほたての殻。
「北海道から買ったこのほたての殻に、牡蠣の稚貝を付着させて、海に浮かべた筏(いかだ)に吊るして育てるんだよ」
 この地で牡蠣の養殖を行っている河部水産の社長、加藤忠則さんが説明してくれました。
「河川から養分が流れ込む河口付近は、沖よりも早く大きく育つし、沖であっても区域によって潮の流れなどの影響を受けて、獲れ高がぜんぜん違う。だから、毎年だれがどの区域で育てるのか抽選で決めるんだよ」(加藤さん)
 現在、稚貝を他県から購入することもあるそうですが、「地種(地元の稚貝)を沖でゆっくり育てると、小粒だが味もおいしい」のだとか。

水揚げ後に起こるフードロス

水揚げ後に起こるフードロス

 育った牡蠣の水揚げは、クレーンを装備した船を沖の筏に横付けして行います。長さが10mにもなる「連(れん)」をクレーンで海から引き揚ると、ゴツゴツとした牡蠣がワイヤーに連なり、稚貝を付着させたほたての殻はまったく見えないほどの密集ぶり。船上に移動したらワイヤーを切断し、牡蠣を一気に落下。甲板には、牡蠣が散らばります。

 水揚げして洗った牡蠣は、海水を吐かせるために滅菌海水に一昼夜つけてから、殻を外してむきみにする作業を行います。
「牡蠣の殻は形も大きさも異なるから機械化なんてできないんですよ。ここらでは『打ち子』と呼んでいるけれど、人がひとつひとつ手作業でむいている。爪ぐらいの大きさにしか育っていないものや、身の状態が悪いものなどは廃棄物として牡蠣の殻と一緒に業者に出すしかないけど、それは粉砕して飼料にしてるんよ」(加藤さん)
 人為的にロスが生じる場合もあります。たとえば、牡蠣の販売は全国的には10月からはじまりますが、広島の牡蠣の旬は11月中旬から。1か月半ほど遅いため、後れを取らないように無理して早目に水揚げをする漁師もいるのだとか。本来の旬より早く水揚げしてしまうため、先に旬を迎えた大粒のものより見劣りして売れ残り、ロスになってしまうのです。

規格は、サイズ別に11段階にも!

 むきみにした牡蠣を加工するのは、水産加工会社のタカノブ食品。呉市音戸から車で1時間半ほど、三原市にある工場を訪ねました。同社の主力商品である、冷凍粒牡蠣や冷凍牡蠣フライを作っています。
「冷凍の牡蠣フライは、大小の差があまり出ないようにという配慮から、サイズを11段階に分類して、大きさをそろえています。一般的には規格外とされる2S(10g)や3S(7g)のものも、冷凍粒牡蠣として販売しています」
 そう話すのは、タカノブ食品株式会社三原工場長・坂口昌充さん。
 
「たとえば、牡蠣ごはんなら、大粒のものを使うと茶わんに1~2粒しか入らないけど、2S、3Sという小粒のものならたっぷり入っておいしい。また、牡蠣の燻製のように、風味の強いものをおつまみにするのなら小さいサイズが合うのではないかと考えています」
 2S、3Sサイズならではの使い方を模索しています。

規格外の牡蠣はペーストにして活用

「3Sよりも小さい規格外のものについては、オイスターソースの原料や、牡蠣エキスなどに加工するという方法もありますが、新たな価値を付けた商品として『牡蠣ペースト』の開発も行っています。牡蠣に料理酒を加えてペースト状にしたもので、そのままでもおいしいですし、みそ汁や鍋に入れて調味料のように使ったり、マヨネーズと和えてディップにしたりと、いろいろ使えます」(坂口さん)
 牡蠣ペーストを使ったディップ、ポタージュスープ、ガーリックバケット、ペペロンチーノなどは、どれも牡蠣の風味が生かされいつもと違った味わいに。牡蠣ペーストは、手軽に使えるお助けアイテムとして重宝しそうです。
 小粒であることを生かす料理の提案や、粒のまま扱うのが難しいものは上手に加工する。こんなふうにして、私たちは漁師が手塩にかけて育てた牡蠣をむだなくおいしくいただくことができます。
「牡蠣=大粒が良品」という考え方から抜け出し、用途に合わせて選んだり、作り手に想いを馳せたりして「ふぞろい品」を楽しんでみてはいかがでしょうか。

ほたての殻を40~50枚ほど連ね、筏に吊るして海に入れる。卵からかえった牡蠣の稚貝は海の中でほたての殻に付着する。稚貝を付着させたほたての殻もあり、それを仕入れて使うことも。
筏に吊るして浅瀬でゆっくり成長させる。1枚の殻に付着した100~200の稚貝は数か月後には20~30に淘汰され、強いものだけが生き残る。その後、殻と殻の間を20cmほどあけて連ねて、沖にある筏に吊るして1年から1年半ほどで収穫時期に。
有限会社河部水産・社長加藤忠則さん

有限会社河部水産・社長
加藤忠則さん

河部水産の三代目。21歳で漁師になり、この道37年。会社には、6名の社員と牡蠣の殻をむくパートの「打ち子」さんが13名が在籍。「音戸の海でゆっくりじっくり育った牡蠣は、おいしいよ」と。

有限会社河部水産・社長加藤忠則さん

タカノブ食品株式会社・三原工場工場長
坂口昌充さん

入社27年目、5年ほど前から工場長を務める。「安全・安心」を最も重視し、味も含め品質には自信あり。好きな牡蠣料理は、「やっぱりカキフライ。あとエビチリならぬ牡蠣チリもいいですね」と。

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