文: 田口清香 写真:鹿又聡恵
「石窯ピザ南風堂」のピザの特長はなんといっても、イタリア製の石窯を使って400℃の高温で焼いていること。石窯はピザを短時間で一気に焼き上げ、生地内部の水分を保持しつつ、表面はパリッと、中はふっくらもちもちとしたナポリタイプのピザ独特の食感を生み出します。
石窯の中はピザ生地を置く位置によって微妙に温度が違うので、それぞれの生地の焼き目の様子を目で見て確認しながら焼き時間を毎回調整しています。
ピザ生地の材料は小麦粉、塩、酵母、水だけといたってシンプル。小麦粉は国産、イタリア産、オーストラリア産など数種類の小麦粉を試し、酵母は3種類、これに水分量や捏ねる時間などを変え、70種類近くの組み合わせを試してピザ生地を開発しました。特に小麦粉は「色々試した中で、香りが強く一番おいしかった」と正志さんが語る、国産の準強力粉を使用しています。ご家庭で2度焼きして仕上げた時に、固くなりすぎず一番おいしくなる小麦粉を追求した結果選ばれたこだわりの原料です。
南風堂さんならではの作り方のこだわりをうかがうと、「生地を作ってから最低72時間、通常5日ほど熟成させている」とのこと。長期熟成させることで、香りがよくなり、焼き上がりの見た目も違ってくるそうです。
酵母は酵母臭が少なく、小麦粉の香りをじゃましない有機天然酵母を使っています。発酵の力は弱いので、なおさら長期熟成が重要だとのこと。これだけの熟成期間をとるのは、他になかなかありません。
ピザのレシピは正志さんと姉の文子さんで考えているそう。正志さんは、以前コンピューター関係の仕事をされていましたが、夢だったレストラン経営を目指してイタリアにある料理学校でイタリア料理について学び、ピザの作り方はイタリアの石窯のメーカーからおしえてもらったり、独学で今の製法にたどり着きました。「今まで南風堂で開発してきたレシピは200種類(!) を超えるのではないか」とのこと。後日、数えていただいたら、221種類のレシピがあったそうです。
南風堂さんにはこれまでも豊作のりんごや、サイズなどの理由で規格外となったレモンを使ったピザ作りをお願いしてきました。「自由に好きなピザを作ってくださいと言われるより、原料からどんなピザを作ろうかと考える方がアイデアが浮かぶんですよ」というアイデアマンの正志さんです。
今回は、新潟県産の、鞘に1粒か2粒しか豆が入っていない、鞘に傷があるなどで規格外としてはじかれた茶豆を原料に使ってピザを作ってもらいました。
茶豆と生クリームを合わせた枝豆クリームをベースに、新潟県産の茶豆、金時豆、大豆の3種類の豆と、モッツァレラチーズ、チーズの王様と呼ばれるパルミジャーノレッジャーノをトッピング。お豆がメインでさっぱり感を感じさせつつも、濃厚なチーズで満足感をプラスした、日本の旬を楽しむ創作ピザができました。一切れ頬張るとお豆の風味が口いっぱいに広がります。
枝豆クリームは機械を使わず、手で1枚1枚生地に塗っています。多い時で1日10種類近くのピザを作ることもあるそうですが、これは全てのピザとその工程をほぼ手作業で製造しているからこそできるそう。
閑静な住宅街の一角にある工房で、石窯ピザは作られていました。伺った際は、工房で働く皆さんが明るく挨拶をして迎えてくださいました。店長をはじめ、皆さんがアットホームな雰囲気の中、楽しんでピザ作りをされている姿が印象的でした。
「石窯ピザ南風堂」さんのピザは、不定期でふぞろいRadish商品としてご紹介したり、おいしい定期便「石窯ピザ倶楽部」で楽しんでいただけます。
今後もピザの材料として使えそうな「ふぞろい」原料をみつけたら、正志さんに新たなピザ作りをお願いするつもりです。お楽しみに。