らでぃっしゅぼーや

今週の畑だより

らでぃっしゅぼーや農産担当による
畑の"今"を届ける産地密着コラム

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農薬とりんご栽培
アップルファームさみず(長野県)

長野県飯綱町のりんご産地、アップルファームさみずの勉強会にお邪魔してきました。

さみずでは毎年この時期、外部から専門家を招いて勉強会を開催しています。果樹の産地では農薬散布の計画を立てるタイミングです。

いつ、どんな虫や病気に対しどの農薬を使うかの戦略を練る大事な時期。甘い果実をつけ1年中「樹」が存在する果樹の栽培は、虫や病気との戦いでもあり、無計画ではとても太刀打ちできません。

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カメムシ、ダニ…果樹栽培は虫との戦い

「奇跡のりんご(※1)」のように、やり方次第で農薬を使わなくても作れるのでは?と思われるかもしれませんが、りんごに農薬を使わなかった場合97%収穫量が減るといわれます(※2)

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例えば、りんごの葉を吸う厄介な「ナミハダニ」

体長わずか0.6mmで見つけにくく、気温が高いと2週間で400倍にも繁殖します。小さな虫ほど世代交代、つまり生物種としての進化が早いため、特定の農薬を連用するとその農薬が効かない「抵抗性ダニ」が生まれやすくなります。

農薬を控える生産者ほど、虫や病原菌の生態について理解し、また武器となる農薬の特性を勉強し、限られた散布回数でいかに効果的に果樹を守るか、考え抜く必要があります。

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それぞれの虫がどの時期に増えるかを予測して年間の散布計画を立てますが、近年、高温の影響で虫の世代交代が高速化・前進しているのが悩みの種。

発生時期が早まると、狙いを定めて農薬をまいても、すでに個体が増えた後だと、抑えきれなくなっていきます。

さらに難しいのは、自分の畑だけじゃ対処ができないこと。果樹の大敵のカメムシは常に果樹園にいるわけではなく、杉やヒノキの森で増えます。

そうして、ヒノキの実を吸いつくし、秋の実りの時期に果樹園にやってきます。増える前に抑えたいところですが、森林にはさすがに農薬はまけません。

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カメムシは森林で増え、果樹園にやってくる

では、さみずの生産者はこれらの敵にどう対処しているのでしょう?

一般的には「ハダニ」対策として殺ダニ剤を2~3回使いますが、さみずの生産者はほとんど使いません。

悪いダニを食べてくれる「カブリダニ」をうまく活用しています。害虫を食べてくれる生物を農業では「天敵」といいます。

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天敵の例~テントウムシはアブラムシを食べてくれる天敵です。

そんないい天敵がいるのなら使わない手はないのですが、普段から殺虫剤を多投すると、味方のカブリダニも殺してしまうため、農薬を控えていないと味方にはできません。

また虫の出す性フェロモンを利用し、交尾できなくして虫の密度を減らす「交信かく乱剤」や、微生物農薬、農薬が雨等で流れ落ちないようにする展着剤、デンプンののり状の粘着効果で虫をしとめる「粘着くん」など、安全性の高いあらゆる農薬を駆使。

「安全な農薬」というと聞こえはよいですが、殺虫効果は劣り、使い方をよく理解していないと虫を抑えられない怖さがあるため、使うには正しい知識と勇気が必要です。

一人だと二の足を踏みそうなチャレンジも、仲間とみんなで勉強して使い方を学び、ノウハウを共有することで、レベルの高い栽培を実現できています。

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出荷にたどり着くまでには、虫や病気との長い戦いが

いま、国も「みどりの食料システム戦略」のなかで農薬を減らす方針を打ち出していますが、加速する気候変動で畑では虫の悩みが深まるばかり。

講師の方も、ハードルの高い国の方針と現場とのギャップを感じているようですが、さみずの取り組みを見て「すでに国の方針にあっており、一般よりずっと先をいっています!」と感嘆されていました。

さみずの代表の山下一樹さんは「農薬について高度な知識をもち、農業を続けていくために勉強を続けていく」と総括されていました。

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アップルファームさみずの代表山下さん(中央)

果樹において、農薬を減らすために必要なことは、農薬から目をそらすことではなく、誰よりも農薬について学ぶことなのだと感じた1日でした。

※1:「奇跡のリンゴ」は、無農薬のリンゴ栽培を実現した生産者の実話を元に2013年に公開された映画
※2:「病害虫と雑草による農作物の損失」(2008年6月 日本植物防疫協会)より

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