東洋医学の基本は、日々の「ご自愛」です。
心がけから始める健やかな身体とこころの整え方を
均整師の中野史朗さんがやさしくガイドします。

指 南・48

ストレスを上手に逃がそう

 一般的に身体の痛みへの効果が期待される東洋医学ですが、実はその守備範囲は広いものです。私の施術所には風邪やアレルギー、鬱といった不調に悩んでいる方もいらっしゃいます。

 手を当てる、鍼やお灸をするといった身体の表面への施術で、なぜ痛み以外の不調も改善するのでしょうか? どうやら、東洋医学の施術というのは、自律神経の働きに大きく関わっているからのようです。

 身体のあらゆる働きを昼夜コントロールしている自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられます。交感神経は身体を活発に、副交感神経はリラックスさせます。この両方のバランスがとれていると健康が保たれるのですが、過度なストレスにさらされるとそのバランスが乱れてきます。

 交感神経が過剰に働きすぎると、身体をリラックスさせることが出来ないため、筋肉の緊張から身体の痛みに繋がります。また、血液の流れが悪くなり消化・吸収・排泄能力が悪くなります。精神的には、イライラしたり逆に不安になったり、眠れなかったり。免疫の働きも悪くなり、病気への抵抗力が落ちるといわれています。

 逆に副交感神経が働きすぎるとアレルギーやだるさ、疲労感といった症状に悩まされたり、気分が落ち込みやすくもなります。また、免疫の働きではばい菌への抵抗力が落ちるといわれています。

 東洋医学の施術は、この過剰に働きすぎている交感神経と副交感神経を落ち着かせることにより、身体のさまざまな不調が自然に解消していくようにするのが目的といわれています。

 施術を受けると身体が緩み、呼吸も深くなっておなかもグルグル鳴ります。だんだんウトウトしたり、涙が流れることも。地に足が着き姿勢も良くなり、やる気が出ることもあります。これらはすべて自律神経の働きが改善したサインと考えることができます。

 「ご自愛のすすめ」で紹介しているのは、生活の中で自律神経を整える方法でもあります。軽い運動、ゆっくりお風呂に入る、足湯、深呼吸、腹八分目、そして質の良い睡眠。すべて自律神経の働きを整えてくれます。

 生きているといろいろなストレスに遭遇します。でも、そのストレスの影響は、自律神経を整えているとご自身で上手く身体から逃すことができるので、日々の生活に取り入れてみてください。

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ご紹介の内容はひとつの参考としていただき、体調と向き合い、
治療については主治医の先生と話し合いながらすすめてください。



中野史朗(なかの・しろう) 均整師・整体師。東京・品川区の治療院「開音堂」で多くの患者さんと向き合う。均整術、鍼灸のほかオステオパシーの研究や通訳・翻訳も手がける。幼児期からの重度のアトピーを東洋医学で克服した。著書に『からだをほぐす こころをゆるめる』(説話社刊)。

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