優しくされて、冷たくされて、宍道湖しじみはおいしくなる。 有限会社渡邊水産 日野久徳さん

2018.4.23

島根県東部に位置する宍道湖は、汽水湖のため生態系が特徴的で、生息する魚介類は100種以上!
2005年にはラムサール条約にも登録され、その重要性は国際的にも認められるものに。
そんな宍道湖を舞台に広がる、しじみと人々の縁のお話です。

島根県宍道湖
  • 早朝、宍道湖のしじみ漁の様子。
    このような小舟が湖に浮かびます。
  • 漁に出るタイミングを待つ日野さん。
    冬場の宍道湖は息も凍る寒さです。
  • 約50kgもある鋤簾を、
    動く船の上で漁師は自在に操ります。

しじみ獲り名人は、
誰よりもジェントルマン

宍道湖で獲れる水産物の9割以上を占めるしじみ。宍道湖のしじみは「大和しじみ」というぷっくりと身が厚くて味もよい種類のため、ブランドしじみとして高い人気を誇ります。そんなしじみ漁を支える漁師は約300名。中でも名人として知られるのが日野久徳さんです。漁師歴は40年以上。船を出せばよい漁場を知りたい同業者に後をつけられることもあるのだとか。

日野久徳さん

日野さんが名人たるゆえんは漁に対する姿勢の違いでしょう。成果を急ぐ漁師は、鋤簾じょれんという道具のかぎ爪を作業優先で尖ったものにしたり、湖底をむやみにかき回したりと、しじみを乱暴に扱いがち。一方の日野さん、生産性などどこ吹く風。その漁は優しく丁寧です。実はしじみはとても繊細。ちょっとした刺激にも驚いて口を閉じ、殻と身の隙間に砂を巻き込んでしまいます。だから、どんなに手間でもしじみが驚かないよう優しく扱うのが日野さん流。漁場も砂地よりも体力仕事になる泥地専門です。
「砂地は楽やけど、ほかの漁師がかき回して殻は割れとるし、砂は入っとるしで、いいしじみはおらんよ」

日野さんとの付き合いは30年以上という宍道湖しじみ問屋の栂野善彦さんは、約300名の漁師の中でも日野さんは別格だと断言します。
「しじみの良し悪しは漁師の人柄を見ればわかります。扱い方が違うから。日野さんは本当に紳士。だからしじみもおいしいんです」

しじみ漁をする日野久徳さん

生のしじみが当然の地で、
冷凍しじみを開発することに

宍道湖を有する島根県人にとって、しじみは新鮮で当然。冷凍ものに興味を持つ人は皆無でした。冷凍しじみ開発の中心人物、渡邊水産の専務・渡辺一史さんでさえ「冷凍しじみなんて、ありえない」と思っていたそうです。そんな渡辺さんを冷凍しじみ開発に導いたのは不思議な縁でした。

「ある人に “冷凍しじみを作ってほしい”と言われたんです」。相手は渡辺さんとは旧知の間柄。引き受けたものの、当時の渡邊水産は干物が主力。しじみは未知の領域でした。そんな時、偶然にも宍道湖しじみを扱う栂野さんと出会い「これは何かの縁だ」と。さらには冷凍方法で思い悩んでいた時、しじみ研究の第一人者・中村幹雄氏を知るのです。中村氏の推奨する方法で冷凍しじみを作ると確かに旨みがよく出ておいしい。「これなら自信を持ってどこにでも出せる! 背中を押されたような気持ちになりました」。

それから20年以上。かつては地元の人だけの楽しみだった宍道湖しじみは、冷凍技術によって遠く離れた私たちも手軽に楽しめるようになりました。不思議な縁から生まれた宍道湖の冷凍しじみ。この不思議な縁が目指すゴールは皆様の食卓です!

冷凍しじみを開発した立役者。渡邊水産の専務、渡辺一史さん。

おいしさのヒミツ

渡邊水産のこだわり

  • 実は冷凍の方が、ダシが出る!
    一度冷凍させたしじみは細胞壁が壊れ、旨みが出やすくなります。水に入れて煮ると汁が白く濁るのは、ダシがたっぷり出ている証拠です。
  • “空中放置”で旨み成分アップ!
    塩抜きしたしじみはすぐ冷凍せず、空気中に放置。しじみは身を守るためにコハク酸などの成分を増やすため、旨みもさらにアップします。
  • 選別は目と耳と手で、入念に。
    “バクダン”と呼ばれる泥が詰まった貝を筆頭に死貝やゴミ、石を徹底的に除去。貝が触れ合う音を聞き、触感なども駆使しながらよいものを選別していきます。

つくり手こだわりの商品

※時期の関係でお取り扱いがない、もしくは販売終了している場合がございます。予めご了承ください。

島根県出雲市浜町

有限会社渡邊水産

1965年創業。山陰沖の魚で作る干物や漬魚などを主力に、冷凍しじみも取り扱う水産加工メーカー。干物を“下処理済みの素材”として使うレシピ紹介など、魚介類を手軽に食べる方法の普及にも熱心です。

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