人と人をつなぎ地に根を張り生きる耕人舎(こうじんしゃ) 原和男さん

2017.8.7

和歌山県東牟婁郡(ひがしむろぐん)那智勝浦町(なちかつうらちょう)の色川(いろかわ)地域は、紀伊半島・南東部の山あいにあります。
急激に過疎化が進むなか、移住者を受け入れはじめて40年以上の歴史がありますが、その移住の先陣を切ったのが、ロングセラー商品「梅エキス」をつくる、耕人舎です。

和歌山県那智勝浦町色川 耕人舎
  • 北海道、兵庫など全国から移住してきたスタッフのみなさん
  • たわわに実った梅。今年は雨が少なく収量は少ないがしっかりした梅に育った
  • 6月の梅雨の晴れ間に収穫

大切に育てた梅を粗糖のみで
漬け込み寝かせたエキス

東京から新幹線と在来線を乗り継ぎ6時間―。那智勝浦町は、世界遺産に登録されている熊野那智大社や那智の大滝が知られる観光地で、日本有数の生鮮マグロ水揚高を誇る漁業の町でもあります。そんな観光地の入り口である駅から車で30分。急なカーブを登った山間地に色川地域があります。
その色川にはじめて移住したのが「耕人舎」の十数名でした。移住してはじめたのが、和歌山の特産でもある梅の栽培。しかも、農薬に頼らない栽培です。そして、自分たちで大切に育てた梅を自分たちで加工するという、一貫生産をはじめたのです。
「使う梅は、自分たちで栽培した梅と長年の信頼関係を築いてきた紀州地方の生産者の梅。自分たちの手が届く範囲でつくっています。わからないものが介在しないから、消費者に安心して提供できるし、作る側も安心です」と話すのは、耕人舎の現代表・原和男さん。原さんは、1981年に移住しました。
「自然のものをそのまま丸ごと使いたい。丸ごといただく、ということを考えて梅エキスをつくりはじめました。原料は梅と種子島の粗糖のみ。粗糖はいろいろなものを試しましたが、種子島の粗糖が一番梅に合いました。じっくり寝かせてエキスを抽出しています」

棚田が広がる美しい風景。米、梅、お茶も、かつて棚田だったところを利用して栽培している

梅のように土地に根を張り
人と人をつなぎたい

色川を象徴する景色のひとつが棚田です。急峻な土地で作物を栽培するため、1000年以上前に先人たちが痩せた土地を耕し築き上げました。
「以前、棚田として使われていた土を耕すということは、昔の人たちの思いを感じながら作業するということ。田舎の暮らしをつなぐということは、先人たちの思いをつないでいくということです」
梅は、棚田を利用して栽培。「木が気持ちよく育っていくのをお手伝いしている程度」にあまり手をかけず、剪定、鶏糞中心の堆肥、草生栽培などで、木をいかに元気にするかを考えています。
こうした栽培で梅の木がしっかり根を張るように、移住者たちも地元の人たちに助けられながら、色川の土地に根を張りつつあるようです。
「地方消滅と言われていますが、全国の中山間地域には、地に足をつけて暮らしてきた分厚い歴史があります。地域が残ってつくる人たちがいれば、消費地に多くを届けられます。“つくる人”と“消費者”をしっかりつなげたい」と原さん。「耕人舎は、栽培から加工まで一貫した物づくりで消費者に届けるというモデルケース。しっかりとした梅エキスをつくるために、つくる人も育ててつなげていきたい。すべては人ですね」

おいしさのヒミツ

耕人舎のこだわり

  • 3日間ほど追熟させた梅
    3日間ほど追熟させた梅を選別し、梅のエキスが出やすいように表面にキズを付けて樽に投入。熟成した梅を使うとエキスの味も色も濃くなる。
  • 種子島の粗糖を使用
    梅の次に粗糖を入れる。粗糖は、当初から種子島産を使用。原さんもいろいろな砂糖を試したが、「やっぱり種子島の粗糖が一番合う」。
  • 3ヶ月寝かせたものを瓶詰め
    梅と粗糖を入れることを何度か繰り返す。エキスは2、3日で抽出しはじめる。らでぃっしゅぼーやには、3ヶ月寝かせたものを瓶詰めして出荷。

つくり手こだわりの商品

※時期の関係でお取り扱いがない、もしくは販売終了している場合がございます。予めご了承ください。

耕人舎(こうじんしゃ)

耕人舎(こうじんしゃ)

スタッフは、かつて安全な食べ物を求める消費者として町で暮らしていた人たちばかり。安全性には、皆が強いこだわりを持って取り組んでいます。「耕人舎」は耕す人という意味のほかに、人を耕し思いを伝えるという意味もあります。

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